いきがい村 ご挨拶

           

 

森で暮らす、いきがい村便り

石井 正三

山桜や新緑のシーズンも過ぎ、5月後半からは雨降りが増えて、梅雨時が早めに始まる感じになりました。その分木々は一層新緑に染まって、元気に枝を伸ばしています。
 当施設周囲では、ソメイヨシノが無い代わり、植樹したカワヅザクラが早春に咲きその後はオオシマザクラが追いかけて、森ではヤマザクラ・カスミザクラ・オオヤマザクラ・ウワミズザクラ・イヌザクラなどが次々と旬を迎えるので、毎年長く桜の季節を楽しむことができます。
 最近は列植したミカンが白い花を一面につけ、キリの紫やホオノキの白い花が空に向かって開いています。

 コロナ渦は3年目となり、オミクロンやその後の株では感染力が上がる一方重症化率は下がっているのかもしれません。施設としては対応マニュアルを整備し日々の業務で実践しています。皆様のご協力のお陰様で、ワクチン接種も円滑に進み、組織として大きな感染の連鎖に巻き込まれることなく活動を維持することができています。
 コロナ渦へのご心配の余り、通所や訪問サービスを避けて一層の引きこもり状態になって活動性が落ちてしまうことがあります。そんな状況の後でも、もう一度生活を取り戻された方々がいます。維持期のリハビリの大切さは、そのような形でご理解いただける事例がむしろ増えているかもしれません。

 時代はデジタル化の方向にまっしぐらに向かっているように見えます。しかし、感染症や戦乱は世界中でやまず、社会的な交流も時節に合わせたお祭りやイベントも困難になっています。特に地域に根付いていたお祭りなどの行事が一律に自粛されることについては、大きな危惧を感じます。長い歴史に根差した節目ごとの行事には、表面上の経済効果以上の深い意味がある筈です。冬の寒さの中で新年を祝って気持ちを新たにし、草木の成長や動物たちの活動に合わせて個人も地域社会も活動を起こします。秋の実りを祈るお祭りから、ご先祖をお迎えする夏、実りに感謝する秋の祭り、これらを自粛することは地域社会丸ごと時間や季節の動きに鈍感になって自閉的な生活に陥り、感謝を忘れた集団になってしまう気配があります。

 暦における日にちや曜日の感覚以上に大切にしたいのは、季節感です。いきがい村にはそのような移ろい行く自然と一体になったフィーリングがあることを大切にしています。いくつもの事象が同じように繰り返しているように見えて、日本の豊かな自然の四季の巡りとさまざまな事象の組み合わせには無限の多様性があり、今回限りの現れ方に感慨を覚えることもあります。例年のように渡ってきた燕たちが、いつもの中庭パティオに面して巣作りするだけでなく、正面玄関側に2個も巣を完成させました。下を通る方々には粗相が無いように工事用のコーンを立てることになりましたが、できれば多少の不自由さをお目こぼし頂きながら、燕たちの産卵から子育てそして巣立ちまでの頑張りを入所の方々とご一緒に移ろいゆく時間の中で見守りたいと思います。